前にも書きましたが、元気村の生産範囲(常総市、坂東市)は、首都圏の台所の相当部分を担っている生産地です。
 茨城県は北海道を除けば全国一の農業県です。茨城県といっても畑作物はその大半を常総市、坂東市を主体とする県西地域。米も、平成の大合併前は旧水海道市は全県で4位の生産量でした。もっとも、今回の水害で市内の東部は壊滅的被害にあったので、今年の収穫量は相当な落ち込みだと思います。
 いづれにしろ、野菜に限って言えば首都圏の野菜価格の決定権はこの地域にあるといっても全く過言ではありません。
 逆に言えば、好むと好まざるとにかかわらず、首都圏の消費者はこの地域の野菜を食べなければ生きていけないとも言えます。
 ТPPで関税が撤廃されて安い野菜が入ってくるなんてノー天気に考えている人もいます。
 その前に考えてください。
 皆さんが八百屋さん、スーパーやデパートで購入する野菜は、収穫後どれくらい経過した物なのか。
 生産者は、収穫した野菜を倉庫に運び込み早いもので当日に箱詰めされ、翌日、早くて朝、市場や農協の集荷センターに届けられ、日中トラックに載せられ、翌朝に大田市場や築地市場などに持ち込まれセリにかけられ、早いもので、その日にやっと店頭に並ぶのです。 
 最も早いもので、「採れたて野菜」は実際は収穫して三日後です。
 三日後といえば、元気村では売り場から撤去され、生産者が持帰るか、うちの山羊に餌になるのです。(組合の規則です。なお夏場は1日乃至2日)
 銀座の常連さんが「すごく新鮮で、おいしい!」と連発し感嘆するのは当然なのです。
 収穫して24時間以内の野菜(根菜類を除いて)しか売っていないのですから。
 
 たまに、てんとう虫が入っていた。青虫が入っていた。葉が食害されていた。なんて苦情があります。
 減農薬、有機栽培(エコ・ファーマー)の認証をとって生産しているので、たまに愛嬌のようにそういうものもあります。生産者には「よく確認してくろよ」とクギを刺していますが、何しろジーさん、バーさんが主体です。
 「スンマセンと頭を下げるしかありません」
 逆に言うと、最近銀座に出店しているどこぞのオネーちゃん。
 「無農薬ですからねー」「おいしいですよー」なんて平気な顔で売っています。
 ところが枝豆なんか実に青々と、まったく食害を受けていない。
 料理はさっぱりわからないけど、生産現場の害虫、自然災害の危被害を調べる仕事を数十年やってきた私です。無農薬で、枝豆がヨトウ虫に食害されない、葉っぱまで真っ青なんて実例がどこにもないけど、いったいどんな魔術を使っているのか教えてもらいたいと思うのです。
 そもそも、「食品表示法」「JAS法」では「無農薬」という表示自体が違法なんですよ。

 話しが脱線してしまったけど、ТPPにしろ、「無農薬ですからねー」の変なオネーちゃんにしろ、「新鮮・安全・安心」が金のためにないがしろにされている、消費者の命の源となる健康の前に拝金が先行していることに憤りを感じるのですが、皆さんはどう思いますか?
 
 強欲な拝金のために、真面目に土と格闘する農民が報われない、主人公でありべき農民がないがしろにされているから正当な価格が保証されないから後継者も生まれないのだと思います。
 首都圏を支えるこの地域の農民も、着実に、確実に急速に減り続けています。
 何度も言います。未来永劫、「買ってあげるわ」なんて態度は絶対に続きません。
 その終焉は驚くほどのスピードで近づいているのです。
2015/10/29 http://josogenkimura.blog.jp/ ポチ